もう2週間ほど前のことになりますが…
去る2月29日、中区役所にて開催された『高齢ペットとの暮らし方セミナー』を受講してきました。
今回のセミナーは地元のドッグトレーナーさんによる講演と、獣医師さんによる講演の2部構成でした。
簡単ですがセミナーのレポートも兼ね、講演の要旨をまとめておきます。
第1部はドッグトレーナーの大久保先生によるシニア犬のケアに関するお話。
健康に歳を重ねていくには日頃どんなケアを行っていけば良いか、特に食事、健康管理、お手入れ、マッサージ、運動、リフレッシュトレーニングの6つのポイントに絞って解説してくださいました。
■食事…まずは食べてもらうことが大前提!
・若い頃よりも消化吸収能力が低下しているシニア犬の食事は形状(ドライ、ウェット、ふやかす)や回数を工夫する。
・食事がその子に合っているかどうかはウンチの状態の善し悪しで確認。
・価格が高いフードはそれなりに考えられていて質も高いが、それが我が子に合うフードだとは限らない。フードが多様化した現在、店員さんんに聞いたり、最低でも1ヶ月はじっくり時間をかけて試したりしながら決めると良い。
■健康管理…変化を把握する。
<チェックポイント>
・活力、反応(目の輝き、動き、呼んだ時の反応など)
・食欲
・体臭
・尿、便の状態
・皮膚の状態(できもの、フケ、べたつき、赤くなっている、ニオイなど)
■お手入れ…無理は禁物!
・ブラッシング
イボなどに注意し、無理にやらないこと。
もつれや毛玉がある時は、毛先からブラシやスリッカーなどでほぐし、仕上げにコームでとかす。
最初からコームを使うのは皮膚への負担が大きいのでNG。
・シャンプー
乾燥をしっかり行うこと。乾燥が不十分だと皮膚トラブルの原因に。
・足裏、爪切り
足裏の毛が伸びていると滑りやすく足腰を痛める原因に。
・肛門腺絞り
※シャンプー、足裏、爪切り、肛門腺絞りは無理せずプロ(トリマーや動物病院)の手を借りるのがおすすめ。
■マッサージ…強くせず、やさしく。
マッサージを習慣化することで体の変化(腫瘍など)が分かる。
ただし、腫瘍がある場合のリンパマッサージは控える。
※参考書籍⇒『ワンちゃんのリンパマッサージ』
■運動…無理せず極力継続!
・無理な運動は禁物だがお散歩は極力継続していくこと。(足腰が弱った子でも、補助具を使ってお散歩を継続した方が良い)
・なるべくやわらかい地面(コンクリートではなく土や芝生の上)を歩く。靴下や靴を履いて衝撃を和らげるのも有効。
■リフレッシュトレーニング
・頭を使う行動をさせて、脳を活性化!
└トレーニングの一例:狭いところでリードをつけてゆっくり前に歩かせたり後ろを歩かせたりする等
・犬本来の特性を呼び覚まし、活力を活性化!
└ニオイ嗅ぎで元気になる。(テリトリー意識、脳への刺激)
└他の犬とのふれあいで元気になる。(ケンカなど危険な状態にならなければ、負けん気からくる吠え合いも良い刺激に!)
若い時よりも日頃の健康管理やケアが必要になるシニア犬との暮らし。
高齢になれば頑固になる子が多く、何事も無理強いは禁物ですが、健康に歳を重ねるためにもケアや運動を続けることが大切だということが大変よくわかるお話でした。
第2部は野毛坂どうぶつ病院院長の高尾先生による、犬猫のシニア期に多い病気に関するお話。
シニア犬猫に多い病気のサインや、その病気のメカニズム、治療方法などについて、体系立てて分かりやすく解説してくださいました。
■犬に多い病気
【白内障】
・レンズの変性に伴う視力の低下と消失
・発症のサイン:目が白くなってきた、夜の散歩を嫌がるようになった、物にぶつかるようになった
・治療方法:外科手術
・予防方法:点眼薬、抗酸化サプリメント
※白内障と間違えやすい症状に、加齢による核の硬化症がある。白内障を疑って病院を訪れるワンちゃんの8割が核の硬化症で、目は白濁するが、これは単純な老化で視力も失われないので治療不要。
【弁膜症(慢性心臓病)】
・僧帽弁(血液の逆流防止弁)の閉鎖不全。これにより血液の逆流が起こっていると聴診時に心雑音が聞こえる。
・発症のサイン:咳が増えた、疲れやすくなった、呼吸が速くなった
・治療方法:投薬(日本では外科治療による根治も可能だが、リスク・費用負担共に大きい)
【副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)】
・脳下垂体や副腎の腫瘍を原因とするホルモンの過剰分泌による弊害
・発症のサイン:飲水量が増えた、尿量が増えた、食欲がすごい、お腹がポッコリ膨れてきた、抜け毛が目立つようになった
・治療方法:外科手術が可能だが難易度が高く対応施設も少ない。投薬による治療が一般的。
【変形性関節症】
・加齢に伴う軟骨の変性と摩耗
・発症のサイン:散歩に行きたがらない、段差が上れない、寝起きに足を引きずる、歩幅が狭くなる、眠りが浅い
・治療方法:根治のための治療方法はなく、痛みの緩和と進行抑制のみ。
・予防方法:体重管理、適度な運動による筋力維持
【認知症】
・一度正常に達した認知機能が荒天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活に支障をきたす状態。
・発症のサイン:粗相が増えた、怒りっぽくなった、号令(待てやおすわりなど)が聞けなくなる、夜に起きてウロウロする、夜鳴きがひどくなる、上手く食べられなくなる
・治療方法:投薬と環境改善(初期は観察や環境改善、中期は環境改善やサプリメント、末期は精神安定剤や鎮静剤)
■猫に多い病気
【慢性腎臓病】
・腎臓の機能不全
・発症のサイン:飲水量が増えた、尿量が増えた、食欲低下、痩せてきた
・治療方法:投薬、点滴、療法食
■犬猫両方に多い病気
【歯周病】
・歯を支える歯周組織の炎症と破壊(3歳以上の犬猫の8割が罹患、虫歯とは違う)
・発症のサイン:口が臭う、歯ぐきから出血する、食べこぼす、硬いものを食べない、食欲低下
・治療方法:抜歯
・予防方法:日常的なオーラルケア(歯ブラシ、歯みがきシート、デンタルガム、ペースト、スプレー等)、歯石除去
【腫瘍(がん)】
・体の中で異常な細胞が増え続ける疾病。良性腫瘍と悪性腫瘍がある。
・発症のサイン:罹患部位によって様々(しこりができた、発作を起こした、足を引きずっている、咳が増えた…等)。いつもと様子が違ったら早めに獣医師に相談を!
・治療方法:外科手術、化学療法、放射線療法、緩和ケア
※手術や抗がん剤で根治ができなかった場合でも、がんで弱っている子を元気に(QOLを向上)することができる。
最後に、先生のお話の中でどの病気の子にも当てはまる、素晴らしい言葉があったのでご紹介します。
・どんな病気にも「これが正しい治療法」というものはない。
・治療方法は必ずしも「ベスト」でければならないということはない。「ベター」を探っていきましょう。
病気の治療には手術、投薬などの積極的治療ができるものから、様子をみるしかなく積極的治療方法が特にないものまで、様々あります。
手術ができるかどうかはその子の体力や年齢によっても変わってきますし、お薬が体に合わない子もいます。
さらに、病気の症状以上に通院が苦痛な(ストレスになる)子は、通院や治療を避けるのもひとつの選択肢です。
…そう聞いて、老犬老猫の一飼い主である私自身も、とっても気持ちが楽になりました。
どんな子も生きている以上歳を取り、いつか寿命を迎えます。
その覚悟を持ち、老いや病を受け入れ、困った時や迷った時に何でも相談できる主治医を持つこと、それが飼い主さんの一番の仕事です…という先生の言葉で講演は締めくくられました。
高尾先生のご講演、終始とっても落ち着いた優しい語り口で、何だか動物病院の診察室で先生の説明を聞いているような気分でした。
医学的、専門的な内容も分かりやすい言葉に置き換えて下さり、聞きやすく、理解しやすかったです。
日頃多くの飼い主さんに寄り添い、丁寧な診療をされている先生なのだということが伝わってきました。
新型コロナウィルスが感染拡大する中、セミナーが中止にならないか心配でしたが、是非とも受講したかったので無事開催されて本当に良かったです。(受講者は20〜30名の小規模でした)
会議室前にはアルコール消毒液、受講者は1席ずつ間を空けて着席、講師の先生や職員さんは全員マスク着用…と、安心して受講できる環境を作ってくださった中区役所さんには感謝しかありません!
この日学んだことはすぐに役立つことばかりでしたので、早速日々の生活や仕事に還元していけたらと思います。
▼会場の一角に設けられた、介護グッズの展示エリア。
皆さん手に取って熱心に見学されていました。
▼ブログランキング参加中!いつも応援ありがとうございますm(_ _)m
2020年03月16日
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